辞めようかと悩む若手先生へ 「自分らしく進んで」妹尾昌俊さんに聞く
教育話題

中村茉莉花
ライター

晴れて教員として採用されたのに、1年以内に辞める新任教師が増えています。文科省の調査によると、採用から1年未満で辞めた新任教諭は、2023年度に過去最多の788人(前年度比151人増)。うち3割超の269人は精神疾患が理由でした。 ストレスによる若手の教員の離職を食い止めるために、どのようなことができるのでしょうか。一般社団法人ライフ&ワーク代表理事で、教育研究家の妹尾昌俊さんに聞きました。
全国各地の教育現場を訪れて講演、研修、コンサルティングなどを手がけている。 政府の委員(中教審、部活動ガイドライン検討会議など)や教育委員会のアドバイザーも務めている。 著書に『学校をアップデートする思考法』、『校長先生、教頭先生、そのお悩み解決できます!』、『先生を、死なせない。』、『学校をおもしろくする思考法』、『教師崩壊』、『変わる学校、変わらない学校』など。5人の子育て中。
「潜在的にやめたい」と考えている先生が6割?
Q.ストレスで離職を考える若手教員が増えているとのことです
まず前提として、教員の離職率は他の職種と比べると極めて低い傾向にあります。「3年以内に約3割辞める」と言われ、統計でも出ている民間企業と比べると、3年以内の教員の離職率は全国の公立小中学校全体で約1.47%(2020年度)に過ぎません(文科省資料)。2020年度の離職率は、年齢別で見ると、25〜29歳の割合が一番高く2.28%で、次に25歳未満1.64%、30~39歳1.37%と続きますが、これらは民間の平均的な姿から見れば、すごく低いです。
とはいえ、わざわざ教員免許を取得しないと就けない職と、民間等を単純比較はできませんし、安心はできません。私は2022年から、日本大学の末冨芳教授、NPO法人School Voice Projectと「#教員不足をなくそう緊急アクション」という政策提言プロジェクトに関わっています。このプロジェクトで、2023年12月から24年2月にかけて、教員約1300人を対象にアンケートを行いました。
その結果、「現在、離職・転職を考えている(1年内に離職・転職する可能性がある)」「当面離職・転職は考えていないが、今後も続けられるかは自信がない(3年内に離職・転職する可能性がある)」と答えた教員が、公立小中では、合わせて6割を超えました。つまり、民間企業と比べて離職率は極めて低いものの、潜在的に「やめたい」と考えている人が背後にたくさんいるのが、教員という職種なのです。また、休職者も増加傾向にあります。
新卒で即担任・部活指導…先輩・管理職からのサポートも不十分
Q.特に新任教員が離職を考える主な理由は何でしょうか?
いくつか考えられます。まず、他の職業との大きな違いとして、新任教員が4月から即戦力として現場に配属され、学級担任など重責を任されることが挙げられます。これは、民間企業で例えると、配属3日目の新人にいきなり「今日から1人で顧客のところに出向いてプレゼンを行ってこい」と言うようなもの。いくら教育実習を経て教員免許を手にしている人材とはいえ、他の業界と比べると〝むちゃぶり〟ともいえるハードモードです。
これに加え、

中村茉莉花
大学卒業後、フリーペーパー、新聞の夕刊、オンラインメディアの記者・編集者を経て独立。おもにダイバーシティや教育、カルチャー、ソーシャルイシューの領域で、東京を拠点に活動している。高校時代はフィンランドに1年間留学し、生徒の自主性をうながす教育に衝撃を受ける。小学4年生を筆頭に3人の子育てに日々奮闘中。