「SDGs学活」が学年全体に広がった 学校生活で社会課題と向き合う
教育話題

片山 健志
先生コネクト前編集長

#海を渡る先生
連載「海を渡る先生」は、JICA(国際協力機構)の教師海外研修や海外協力隊などで途上国を訪れ、国際理解教育の現場を体験した先生たちの、その後の教育実践を取り上げる企画です。サイトがまだ「寺子屋朝日for Teachers」だった2024年2月に配信した初回で、SDGsの考え方を採り入れた学級活動のことを紹介しました。それから1年。活動が学年全体に広がり、校内で「SDGsサミット」と銘打った発表会を開くと聞き、改めて取材させてもらいました。
自分も取り組む前提で質問は肯定的に
2023年度にSDGsを採り入れた学活を実践したのは、宇都宮市立泉が丘中学校の英語教師、仙波千浩さん(31)。「教室を使わない時は照明を積極的に消す」など、生徒たちはまず社会のためにできることを班ごとに考える。発表会で提案し、合意が得られたら学年末までクラス全員で続ける、というものだ。元々、前任校時代から続けてきた取り組みで、23年度は担任だった1年生の自分のクラスだけで行っていた。
24年度は2年生の担任になったが、進級とともにクラス替えがあり、1年生でSDGs学活を体験した教え子は散り散りになった。ただ、その生徒たちが1年次の学活の体験を基に、分別されていないごみや照明がついたままの教室などの写真を撮っており、それが学校の課題をみんなで考える材料になったという。SDGs学活のノウハウが学年に広がった形だ。
七つあるクラスごとに、前もって提案内容と発表者を決定。投影するスライド資料や手描きのポスターも生徒たちが作成した。当日は、会場の体育館に2年生約200人が集まり、▽各クラスとも3分で提案▽自分たちでできて続けられる内容に▽質問は「もし自分がやるとしたら」という肯定的な気持ちで――のルールの下、「SDGsサミット」が始まった。
「給食少なめに」カードや札で意志表示
食品ロス削減のため、給食をできるだけ残さないようにする取り組みは、2クラスがテーマに選んだ。どちらも、給食の残りが日々発生する現状を明らかにし、食べきれないと思っても「少なめにして」と言いにくい人がいることをアンケートから導き出した。その上で、減らしてほしいと意思表示する「減らしてカード」や札を給食当番に提示するアイデアだ。
そのうち1クラスは、「減らしてカード」の情報を基に給食当番が少なめのものを先に用意することを提案。当番は途中で量を調節する必要がなくなり、負担も軽くなると考えた。生徒たち自らが出演して食品ロス削減を呼びかける動画も制作し、披露した。
もう1クラスは、……

片山 健志
1999年、朝日新聞入社。北海道支社報道部(現・北海道報道センター)、福島総局、東京社会部などで勤務。社会部では文部科学省など主に教育部門を担当した。「朝日みらい教育フォーラム2017」でコーディネーター。21年4月から25年3月まで寺子屋朝日・先生コネクト編集長。