教職員の立場で被災地支える 兵庫県の「EARTH」、能登地震の学校現場で活動
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社会応援ネットワーク

「震災・学校支援チーム(EARTH)」(事務局:兵庫県教育委員会)は、大災害時に被災地に赴き、避難所となった学校で子どもたちの心のケアや避難所の運営を支援する現役教職員のチームです。被災地の教職員の負担が増す災害時、同じ教職員という立場だからこそできることを心がけて支援に当たってきたといいます。今年1月1日に発生した能登半島地震での支援活動や、そこで見えてきた課題などについて、実際に現地で活動した5人の方々に聞きました。
2000年に兵庫県に発足した同県内の教職員による災害・学校支援チーム。防災・減災に関する専門的な知識や実践的な対応力を備え、大災害発生時には避難所となった学校に派遣され、避難所開設や運営、学校の早期再開、心のケアなどに当たる。これまで、東日本大震災、西日本豪雨災害、大阪府北部地震、鳥取県中部地方を震源とした地震、熊本地震など多くの被災地にEARTH員を派遣してきた。95人でスタートしたが、2024年度は教諭や学校事務職員など233人からなる。今回話を聞いたのは以下の5人。
――能登半島地震が発生後、EARTHはどう動きましたか。
まずは現地のニーズを把握するために1月5日に先遣隊を派遣しました。県庁や市役所に赴いてEARTHを知ってもらい、支援要請してもらうのがミッションでした。
まだ道路の復興が進んでおらず、被害が甚大だった珠洲市へは金沢から車で7時間もかかりました。学校にたくさんの人が避難する中、現地の先生たちは避難所のサポートと新学期の準備に追われていました。現場は混乱していましたが、同じ教職員という立場から求められる支援をスムーズに把握できたのではないかと思います。
その後は、3カ月にわたってEARTH員を派遣し、子どもたちの心のケアや先生のサポート、避難所運営の支援などに当たりました。「子どもや先生のつぶやきを拾おう」という思いで被災地の人々に寄り添う支援を心がけました。日が経つにつれて子どもたちが私たちに慣れ、本音を話してくれる様子が印象的でした。
――それぞれ自分の学校での仕事もある中、どうやって日程調整するのですか。能登半島地震での活動実績も教えてください。
EARTH員には、県教育委員会から派遣が必要となりそうな候補日が連絡されます。これに基づき、所属校の教育活動に支障がないよう管理職と相談して、派遣可能な日程を回答します。県教委はこの回答を確認し、どの時期にだれを派遣するかを決めます。
9次派遣まで延べ103人が現地へ
1月に1次、2次の先遣隊が入ったのに続き、第1次派遣(1月15~19日)から第9次派遣(3月11~15日)まで、延べ103人が現地で活動しました。1回の派遣人数は事務局を含めて6人~14人です。
――被災地の学校は、どんな状況だったのでしょうか。
1月下旬には、すでに集団避難が始まっていました。金沢や岐阜に避難した子どもたちはオンラインで授業を受けており、教室にクラスメートがそろわない日々が続いていました。

社会応援ネットワーク
全国の小中学生向けの『子ども応援便り』編集室が、2011年東日本大震災時、「メッセージ号外」を発行したのを機に設立し、文部科学省等の委託で被災地向けの「心のケア」の出張授業を開始。以降、全国の小学校に『防災手帳』を無料配布するなど、学校現場からの声に徹底して応え、心のケア、防災、共生社会等の出張授業や教材作り、情報発信を続ける。コロナ禍では「こころの健康サポート部」サイトを立ち上げた。書籍に『図解でわかる14歳からのストレスと心のケア』『図解でわかる 14歳からの自然災害と防災』(太田出版)など。