探究とは?「トビタテ!」留学した高校生はいま 編集部コラムvol.23
教育話題
2023.04.23

片山 健志
先生コネクト前編集長

文部科学省を中心とする官民協働の留学支援制度「トビタテ!留学JAPAN」といえば、今や留学を意識する若者で知らない人は少ないだろう。高校生版が始まった2015年、1期生たちを取材した。その活動を紹介した記事は、朝日新聞教育面のルポ「いま子どもたちは」に、「トビタッてみた」のサブタイトルをつけて4回連載された。
この中の一人が山崎真由さん(24)だった。東京都立中等教育学校5年生(高校2年生)だった彼女はその夏、ボランティア活動をするため、アフリカのガーナに2週間、留学した。
海外や国際交流への関心は、中学生の年齢のときに豪州にホームステイしたころから。その後、国際協力の授業で都内の駐日ブルキナファソ大使館を訪ね、大使館職員と話せたことで、遠いアフリカの国とつながれた喜びとともに、途上国をもっと知りたい思いが強くなった。気心の知れた友達や先生たちと6年間を過ごす学校は居心地が良い一方、見慣れた世界を飛び出したい気持ちも手伝い、英国企業が募集するボランティア活動への参加を決めた。折よく始まった「トビタテ」高校生版に応募して選ばれ、ガーナへ向かった。
だが日本で過ごしてきた高校生にとって、たとえ2週間でも現実は厳しかった。滞在先の農家では何度も同じ水を使って洗い物をし、冷蔵庫には虫がいた。少し自信があった英語は、現地では公用語とはいえ発音が英米とは異なり、うまく聞き取れない。「もうちょっと貢献したかったのに、付いて回っただけの高校生だった」。新聞に掲載された記事は、帰国直後の山崎さんの、そんな苦い思いを伝えた。

片山 健志
1999年、朝日新聞入社。北海道支社報道部(現・北海道報道センター)、福島総局、東京社会部などで勤務。社会部では文部科学省など主に教育部門を担当した。「朝日みらい教育フォーラム2017」でコーディネーター。21年4月から25年3月まで寺子屋朝日・先生コネクト編集長。