金融教育の目的は、より良く生きる力を身に付けること 金融庁・渡邊裕美子さん
教育話題

社会応援ネットワーク

――新しく始まった金融教育について、教育現場では戸惑いの声もあるようです。
私も多くの先生から「自分で投資をした経験もないのに、何を教えればいいのか分からない……」と不安の声を耳にすることがあります。「高校で投資教育が始まった」という誤った情報がひとり歩きしてしまい、そうしたネガティブな反応を呼んでいるように思います。
何よりも、まずお伝えしたいことは「金融教育=投資教育」ではないという点です。金融教育は、家計管理や経済活動など、お金に関する包括的な知識を身につけるためのものです。資産形成に関する内容はあくまでも、その一部でしかありません。
また、「学習指導要領が改訂されて金融教育が始まった」というのも誤解です。これまでも家計管理やライフプラン、消費者教育については、家庭科の授業で扱われてきました。社会の変化に応じて、そこに新しい要素として資産形成が加わったというのが実際のところです。先生たちには、ぜひ自信を持ってこれまで行ってきた授業に引き続き取り組んでもらいたいです。
ライフスタイルの多様化が背景に
――なぜ今、金融教育が必要なのでしょうか。
一つは、人が生きる上でお金との関わりは避けて通れないテーマだからです。小学生や中学生になれば、お小遣いやお年玉で欲しい物を買ったり、友だちと遊びに行ったりしますよね。人によっては、高校生でアルバイトを始めることもあるでしょう。成長して年齢が上がるほど、使う金額も大きくなります。成年年齢の引き下げにより、18歳以上であれば、クレジットカードをはじめとする契約を結べるようになりました。社会に出る前に、お金との付き合い方をきちんと学んでおく必要があると思います。

社会応援ネットワーク
全国の小中学生向けの『子ども応援便り』編集室が、2011年東日本大震災時、「メッセージ号外」を発行したのを機に設立し、文部科学省等の委託で被災地向けの「心のケア」の出張授業を開始。以降、全国の小学校に『防災手帳』を無料配布するなど、学校現場からの声に徹底して応え、心のケア、防災、共生社会等の出張授業や教材作り、情報発信を続ける。コロナ禍では「こころの健康サポート部」サイトを立ち上げた。書籍に『図解でわかる14歳からのストレスと心のケア』『図解でわかる 14歳からの自然災害と防災』(太田出版)など。