夜間中学をこれからつくる地域ではいま #編集部コラムVol.17
教育話題

片山 健志
先生コネクト前編集長

「最終学歴が小学校卒業の人」は2020年10月時点で約80万4千人だったことが、国勢調査で2022年6月にわかった。小学校にも中学校にも在籍したことがないか、小学校中退の「未就学者」は約9万4千人。これらを合計した約90万人が、義務教育を終えられなかった人の全体像ということになる。
夜間中学の設置・充実に向けた取組の一層の推進について(依頼)
ただ、中学校を卒業していても不登校などの事情で実質的に十分な教育が受けられなかった人は、90万人に含まれていない。戦後の混乱で学校に行けなかった高齢者、外国籍の人などに加え、形だけは中学を卒業した「形式卒業」の人も含め、義務教育の機会を実質的に保障するのが夜間中学の役割である。
その数は2022年4月時点で15都道府県に40校。さらに2023年度に4校、2024年度には2校が新たに設置される予定となっている。2016年に教育機会確保法が成立し、夜間中学設置を含む就学機会の提供が自治体に義務づけられて新設が進んできた。
2020年に自主夜間中学が産声
冒頭のデータを地域ごとに見ていくと、義務教育を終えられなかった人の人数が他地域に比べて多い割に、夜間中学がない地域があることに気づく。愛知県と名古屋市だ。愛知県は全都道府県で北海道に次いで2番目に多い約4万3千人、名古屋市は政令指定市で大阪市、横浜市に次いで3番目に多い約1万人にのぼる。

片山 健志
1999年、朝日新聞入社。北海道支社報道部(現・北海道報道センター)、福島総局、東京社会部などで勤務。社会部では文部科学省など主に教育部門を担当した。「朝日みらい教育フォーラム2017」でコーディネーター。21年4月から25年3月まで寺子屋朝日・先生コネクト編集長。