中学部活の地域移行 方針転換の背景にあるもの 編集部コラムVol.13
教育話題

片山 健志
先生コネクト前編集長

埼玉県スポーツ協会専務理事の久保正美さん(66)は、高校の体育科教員だった。初任の県立浦和高校では水泳部の顧問として生徒と一緒に練習に打ち込み、以来、部活を通じて生徒が成長する姿を目にしてきた。県教育委員会の指導主事時代に県高等学校体育連盟(高体連)理事長を務め、県の初代スポーツ局長も歴任。部活動の実務に精通する一人と言っていい。
昨年12月、公立中学校の部活動の円滑な地域移行を進めようと同県白岡市が開いたフォーラムのパネリスト席に、久保さんの姿はあった。同市は全国に先駆けて2022年度、4市立中学校の部活動を再編した12の部活動すべてについて、土日祝日の地域移行に踏み切った。部活動改革の先進市である。
パネルディスカッションで久保さんは「埼玉県内の中学校の部活動を一気に地域に移すのは難しい。出してしまうのが本当にいいのか、出せば持続可能になるのか。現実にはかなり難しい」と述べた。運動部だけでも5500あり、約12万人の部員がいることを念頭に置いた発言だったが、地域移行を既定路線とするスポーツ庁や文化庁の意向とは相いれない。

片山 健志
1999年、朝日新聞入社。北海道支社報道部(現・北海道報道センター)、福島総局、東京社会部などで勤務。社会部では文部科学省など主に教育部門を担当した。「朝日みらい教育フォーラム2017」でコーディネーター。21年4月から25年3月まで寺子屋朝日・先生コネクト編集長。
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