誤った気遣い 生徒の母の手紙に記された言葉 #校長ここだけの話
教育話題
2023.02.16

浜田 知宏

ふとした瞬間に、思い返すミスがある。
教員5年目、高校2年生の担任を務めていた1990年代前半のことだ。
修学旅行の準備を任されていた。映画「私をスキーに連れてって」の人気で火がついたスキーブームが続いていた。スキーをメインイベントとして、行き先は宮城県に決まった。
ただ一つ、気がかりがあった。クラスの男子生徒の中に、足に不自由がある生徒がいたことだ。
「補助具を付けずに歩くことは出来たが、スキーではケガをしてしまうかも知れないと思った」と振り返る。
修学旅行先では、生徒たちのためにインストラクターも手配していたが、その男子生徒には少しハードルが高すぎると感じていた。
スキーを履いて困っている姿を他の同級生に笑われるのではないか、男子生徒に恥ずかしい思いをさせるのではないか、そんな不安を抱いたという。
そしてある日、学校で男子生徒にそっと声をかけた。
「修学旅行のスキーは君には無理だと思う。だから別のプログラムを用意しようと思っている。ソリでも良いし、別の場所で散策をしても良い。どうかな?」
どんな表情で男子生徒が返答したのかも覚えていない。ただ、納得したような返事だったように思う。
篠木賢正(しのき・けんしょう)
1962年生まれ。千葉県高等学校長協会会長。88年に社会科教員(地理)として県立高校に着任。2005年に県教育庁教職員課管理主事。11年に印西市立小林中学校教頭、13年から教育庁教職員課主席管理主事などを経て、18年に佐倉南高校長。20年に教育庁企画管理部副参事、21年から東葛飾高校長。大学卒業後は教員採用試験に2回落ち、講師として経験を重ねた。鉄道好き。
#校長ここだけの話は、全国の都道府県高等学校長会を訪ね、各地の校長先生の「横顔」を取材する連載企画です。原則毎月、記事を配信します。記事に登場する自治体の順番は、編集部内の抽選で決めています。
1962年生まれ。千葉県高等学校長協会会長。88年に社会科教員(地理)として県立高校に着任。2005年に県教育庁教職員課管理主事。11年に印西市立小林中学校教頭、13年から教育庁教職員課主席管理主事などを経て、18年に佐倉南高校長。20年に教育庁企画管理部副参事、21年から東葛飾高校長。大学卒業後は教員採用試験に2回落ち、講師として経験を重ねた。鉄道好き。
#校長ここだけの話は、全国の都道府県高等学校長会を訪ね、各地の校長先生の「横顔」を取材する連載企画です。原則毎月、記事を配信します。記事に登場する自治体の順番は、編集部内の抽選で決めています。

浜田 知宏
2010年、朝日新聞社入社。2015年から大阪本社生活文化部で認知症や不妊治療の取材を担当。2018年からは東京本社文化くらし報道部で、幼児教育・保育の無償化や児童虐待防止法の改正など、主に子どもに関わる法律・制度を取材してきた。22年1月から25年3月まで寺子屋朝日・先生コネクト編集部員。
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